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INTERVIEW 日常の陶器
Maison Wabi-Sabi
Yann TOURET 様

フランス・パリ Maison Wabi-Sabi
【日常の陶器】 https://www.maisonwabisabi.com

対談〜日本の伝統工芸品がフランスで羽ばたくには〜

初めてヤンさんと一緒に仕事をさせていただいたのは、日仏友好160周年を記念し実施された<ジャポニズム2018>のプロジェクトの一環である岩手県の伝統工芸品販路開拓事業に弊社が関わらせていただいた際に、セミナー「フランスでのビジネス展開PR」の講師としてお迎えした時でした。

その後2020年の福井県の伝統工芸品販路開拓事業では、ハイエンドブティック、セレクトストア、デザイン会社などとのマッチング・営業、商品の改善等をサポートしていただきました。

パリ組
欧州ブランディングに成功した無印良品(MUJI)のフランスでのフラッグショップ5店舗の立ち上げに携わり、オペレーション、バイヤーの責任者を歴任されたヤンさんですが、フランスと日本は文化も習慣も違うということは常日頃感じられていると思います。工芸品に関しての日本とフランスとの相違点や、販路開拓事業に関わったことで、何か感じたことはありますか?

ヤン
パリ組との仕事は、日本の文化、そして特に陶芸に興味がある私にとって、とても有意義なものでした。日本人は伝統工芸品を日常生活の中に積極的に取り入れているのに対し、フランス人はインテリア品、装飾品の域を超えていない、という気がします。

日本ではとても売れている物でも、フランスで同じように売れるわけではありません。使い方を説明して、日本人がどのように工芸品と共に暮らしているかを伝えていけば、より身近に感じられるのではないかと思います。

また、卸値、発注ミニマム数、支払い方法の確認や取扱方法など、取引が始まる前にクリアにしておくべきいくつもの条件があります。パリ組はそのポイントを確実に把握しており、情報をすぐに共有できたので、スムーズに仕事ができました。

進めていく中で最も重要なのは、卸価格についてです。日本の商品を輸入販売するとなると、輸送費、関税がかかり、必然的にフランスの販売価格は日本の上代の約2倍近くになります。その価格のメカニズムを双方に理解していただかなくてはなりません。その上で卸値を設定していくことも大切ですね。

それを見極めるためにも岩手や福井の伝統工芸品販路開拓事業で行なったテストマーケティングはとても有用だったと思います。なかなかこのような機会はないと思うので。

フランス南部トゥールーズ近郊、アトリエ幽玄

パリ組
具体的に日本とフランスの文化や慣習の違いはどんな点で感じましたか?

ヤン
例えば、ノートやメッセージカードのサイズ感。日本ではA版と同様B版サイズも一般的であるのに対しフランスはA版のみで、使いやすいサイズも日本とフランスとでは違います。

また一般的にフランス人は、気に入れば同じものを長く愛用するという傾向にあります。無くなったり壊れたりした場合は、また同じブランドの同じモデルを購入する。なのでフランスでは、ブランドのベストセラー品は販売を長期において継続します。流行というものにあまり左右されません。

それに対して日本は常に新しいものが注目されます。フランス市場で販売していくのならば、継続して販売する、ということも大切なのかもしれません。



秋田県、白岩焼和兵衛窯

パリ組
文化や習慣は違いますが、歴史のある美しいものを好むという点では、共通していますよね。

ヤン
本当にそうだと思います。歴史のあるヨーロッパと日本。私たちは歴史とともに美しいものを創造してきたという点で同じ。だからフランス人が日本の工芸品に心奪われるわけです。

ラ・メゾン・デュ・サケにて、福井県の伝統工芸品をアドバイス

パリ組
日本の工芸品が美しいと認められるだけでなく、実際に日常に溶け込んで受け入れられるようにしていきたい。そのためには、ヨーロッパ文化にも対応する、流行とは違う意味の新しさを生み出す柔軟さが必要なのだと常々思います。

ヤン
日本でも新しいジェネレーションが、伝統技術を生かしつつ、新しい感覚でいいものを創り上げていますよね。モデルニゼ(近代化)され、これまでに無かった素晴らしいものが誕生しています。

そう、福井県の伝統工芸品販路開拓事業で出会った企業、やなせ和紙の製品に、石をイメージしたデザインの手漉き和紙の箱(harukamiシリーズ)がありました。これはまさに伝統技術とモデルニゼが絶妙にマッチしたいい例。フランス人の誰もが唸った、とてもいい商品でした。

今後もこういった、ただ愛でるだけの美術品とは違う、新しい価値のある商品が出てくることを望みます。

パリ組
まさにこの流れが来ていると思います。ありがとうございました。