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INTERVIEW メゼレイ ガブリエル工芸専門学校
DNMADe オブジェクト学士課程
講師 ピエール・フィリップ 様

フランス DNMADe オブジェクト学士課程
【メゼレイ ガブリエル工芸専門学校 】 https://mezeray-gabriel.lycee.ac-normandie.fr

学生たちの創造力に新しい息吹を。日本の匠の技に触れる日仏産学プロジェクト。

ピエール・フィリップ 講師
工芸専門学校で教鞭を取るようになったきっかけは、職人とのコラボレーション。

私が在籍するのは、DNMADe (Diplôme National des Métiers d'Art et du Design/工芸・デザイン国家資格)オブジェクト学士課程3年間のプログラム。デザインと工芸の相互依存性を重視しており、石工、金属加工、測量、建築など、多くのプロジェクトに活用できる貴重な専門知識を提供しています。

私がここと関わるきっかけになったのは、2018年にパリを離れ、ノルマンディーの自分のアトリエでデザインとアートに専念することを決めた頃のことでした。

東京(国立新美術館)やシンガポール(マリーナベイ)で「メイド・イン・フランス」をテーマにしたグループ展に参加。そこで知り合ったジャーナリストが、アルジャンタン(オルヌ県)で私の作品を展示することを勧め、さらに展示場所をも見つけてくれたのです。 この展示会「デザイン・ハイブリッド」が、私の住む街のこの学校とのつながりを生み出してくれました。

このコーディネーターをしてくれたジャーナリストとの出会いが、全ての始まり。私の知識と経験を未来に繋げてほしいと、学校に迎えてくれたのがきっかけです。
https://www.pierrephilippe.fr

生徒に伝えたいのは、技術の取得を超えた、匠の精神。

最も重要なのは、自分の野望を最後まで追求することです。
しばしば、私は「言い訳を探すのではなく、解決策を見つけるためにここにいるのだ」と生徒たちに話します。

この考え方は学生たちに自分を超えるよう促し、自分に誇りを持つことを可能にします。努力とリスクを取ることから生まれる満足感は、彼らの心に変化をもたらし、現実に内在するあらゆる制約を挑戦として捉え、決して障害ではない、と考えるようになります。3年間で全ての技術やノウハウを網羅することはできませんが、決意、謙虚さ、そして創造力を持った精神的な姿勢があれば、プロジェクトに必要な技術が、どんなものであっても習得することが可能になる。この過程で、学生たちは自分のリソースを活用して独自で創造的な解決策を見つけ出し、彼らがそれを達成するとき、難しさは実際のタスクではなく、自分の認識にあったことに気づくはずです。

つまり、信じることによって可能性が生まれ、この状況と解決策の間の相乗効果から生まれる喜び、それがクリエイティブなエネルギーとなる訳です。
毎日養っていくことで、この満足感は一生続くことができる。それをすべての学生に感じて欲しいのです。

一人の学生の情熱がきっかけとなった、パリ組とのパートナーシップ。

2022年の国際展示会メゾンエオブジェ(パリ)に出展していた、パリ組が欧州販路開拓を担っているガラス加工会社イーストンテック(栃木県)のブースに、当校の生徒が自分自身で日本での研修をお願いしに伺ったことがきっかけでした。パリ組に彼女の3ヶ月の日本での研修のためのサポートを行っていただき、研修もレポートも無事に終了。生徒はもちろん、私もとても貴重な経験をさせていただきました。それを機に、2024年から学生がプロの世界に足を踏み入れることを可能にするための産学プロジェクト、パリ組とのコラボレーションがスタートしました。

第一弾は、日本の和紙を使った折り紙プロジェクト。繊細な和紙。折り方の数だけ可能性があり、一枚の紙の中に広がる無限の世界を持っていますが、同時に忍耐と器用さの両方を必要とします。この技術とシンプルさの間のギャップは、学生たちに強い影響を与え、日本の素材とそれに関連する哲学を学ぶ上で興味深いものとなりました。

第一弾 産学プロジェクト集大成「Phénix」がもたらしたもの。

2024年6月、パリ組のショールームで学生たちがプロを前にプレゼンテーションを行い、大きな成果を生みました。この機会は学生たちにとって多くの貴重な収穫があったと思います。

1.優れた日本の技術による材料での作業が可能になること:パリ組が推進するこれらの材料を使用することで、学生は日本の卓越した技術に触れることができる。
2.プロジェクトがパートナーシップとプロフェッショナルな現実に根ざしていること:この点は非常に重要で、教育は創造的な野望とそれを現実の経済的・社会的環境で実現するための橋渡しとなっている。
3.学生が実際の観客の前で自分の作品を発表する機会を得ること:このような実体験は、彼らのメンタルを変える第一歩であり、方法論と情熱を持ってプロジェクトを実現できる。

私たちのデザインと工芸のセクションに対するパリ組のご理解とサポートに、心から感謝いたします。

第二弾 日本のガラス職人とのプロジェクト。未来に夢をつなぎたい。

2024年の秋から始動するパートナーシップ第二弾は、リサイクルガラスをテーマに、栃木県のガラス加工会社イーストンテックとのコラボレーションです。

地元の産業であるカルバドスやシードルの空き瓶を砕いたものを素材にして、イーストンテックの職人技と学生たちのアイデアで何を生み出すかに挑戦します。このプロジェクトをできるだけ実り多いものにするためにまだ模索していますが、各オブジェクトが持つ象徴的な意味やエネルギーを考慮し、文化的にも教育的にも統合できるテーマを考えています。
イーストンテックの高度で柔軟な技術が、このプロジェクトを非常に興味深いものにしてくれるはずです。

今回タッグを組む企業は、先にお話しした、2023年に生徒がインターンシップで大変お世話になった企業です。この第二弾のプロジェクトは、彼女の貴重な経験によって可能になりました。現在、その生徒は優秀な成績で卒業し(その学年で唯一の専門職優等賞)、再びこの企業で働くことを目指して頑張っており、今回のプロジェクトでも交流の監督を務めるなど参加予定。まさに素晴らしい絆が完成しています。プロジェクトのテーマは、この多くの幸運な偶然に彩られるかもしれません。

これは、人として、職人として、豊かな冒険と言えるもの。美しい物語の始まりを予感させてくれます。